風が腐る

或金持が大きな袋に風を貯へて置いて、夏になつて暑くなると袋の口をあけて少し宛出して凉んで居つた。或る日主人の留守中に小僧たちが密に此の袋を持ち出して、中の風を使つたはよいが、余り出し遇ぎで袋が萎びてしまつたから、その埋合せに大勢で屁を放り込んでふくらませおいた。

斯くとは知らない主人は帰つて来て、例の通り袋の口をあけると、中から臭い風が出て来たから『余り暑いので、風が腐つたわい』