ある茶屋の座敷で、客がおやまと炬燵に当つて遊んでゐる時に気の毒のことじや。出ものはれもの所きらはずとておやまが放屁をすつとした其癖音のせぬじやによつてひどい。おやまははつと思つた。けれどもさすが勤めする身じや。鏡袋から伽羅を出してそつと薫べてまぎらさんとする。其側にゐる座頭が鼻をもくもくして『モシどこぞ此辺に木薬屋は御座りませぬかへ』おやまが『何としたへ』座頭が『ハイどうやら、木薬屋に糞取るやうな匂ひがいたします』