口説き、間男、色情沙汰 ─古川柳にあらはれた猥句―

口説かれてちりをひねるは古風なり。

盃にほこりのたまる不心得。

村くぜついつまで草をむしつてる。

こはいもの見たし娘は封を切り。

間男を見つけて耻を大きくし。

この頃はつくるに亭主気がつかず。

露見するまでは夫と無二のやつ。

御亭主とねんごろが内儀へうつり。

旅の留守内へもごまのはいがつき。

旅戻り大きな腹のまゝで作り。

道ならぬ恋に明き店二軒出来。

押入れできけば此草履はたれだ。

ふたりともうごくなと石カッチカチ。

口紅がさつぱり池の茶屋ではげ。

下女の尻つめれば糠の手でおどし。

股ぐらを嗅ぐやうにして髪をすき。

夜蕎麦売いつの間にやら子を出かし。

御存知のやきてと内儀勝て逃げ。

若後家をすゝめて和尚法に入れ。

お妾の乙な病は寝小便。

此頃はとほうもないと叩く尻。

麦畑ざわざわざわと二人逃げ。

色男何処でしよつたか飛び虱。

片思ひそのくせいけるつらでなし。

後家の供庫裡でゆすつて洒をのみ。

割つたなと所化衆に吉三なぶられる。

下女が夜着借りて亭主をあやまらせ。

しめたなと湯屋で久松なぶられる。

やぼらしい大きな声はせぬものさ。

女医者とんだところへさじかげん。

おれも能い男とごぜをくどくなり。

かたい下女むしつてやれと思ども。

浮気ならいやさと下女はぬかしたり。

女にはいつそ目のある座頭の坊。

出合茶屋惚れた方から払する。

屁をひつて嫁は雪隠出にくがり。

マダ伸びもせぬにモウ来る麦畑。

お見立と呼ばると湿瘡を掻き止める。

色文をひろつて御用百にうり。

一人者隣りの娘うなされる。

一人者かみさん達になぶられる。

れいれいと追手のなかに婿の顔。

心魂にてつして婿は出る気なり。

入婿は下女と一緒におんだされ。

恋婿を入れたで男弟子はこず。

恋婿の下着はみんな直しもの。

婆さまと爺さま寝れば寝たつきり。

湯屋へ来てはなすは安い女郎買。

小間物屋男に櫛を売りたがり。

姑とちがひ舅のいぢりやう。

いとけなきものと隠居の大口説。

おくぞこのない子に隠居はまりこみ。

文のくる度に息子智恵がつき。

意見きく息子の胸に女あり。

座敷牢初手は遊里にとらわれる。

恥しさ知つて女の苦の初め。

花嫁を見に出て娘なぶられる。

番頭は内の羽白をしめたがり。

もつと寝て御座れに嫁は消えたがり。

女房のきくやうによむ偽手紙。

いつたのさ馬鹿馬鹿しいと内儀寝る。

花ものいはず女房けどるなり。

かかアどのとは四五人も出来てから。

胸倉の外に手房は手を知らず。

あら世帯夜具に屏風をかこわせる。

隣から戸をたゝかれる新世帯。

あれは元乳母のずるずるべつたりさ。

美しい後家方丈の室に入り。

惚られる程は残して後家の髪。

よく締めて寝やれと後家の味気なさ。

後家をたてますには糸のひきてあり。

もう後家をやめねばならぬ腹になり。

お寝間から笑ひをふくんで妾でる。

大小をころしてさすは妾の兄。

お妾の昼間は至極無口なり。

日暮れから囲れへ来る夜入道。

逃げのびた腰元前をよく合せ。

お見立だなどゝ腰元引出され。

おとなに乳をふるまい乳母不首尾。

その手代、その下女昼はものいはず。

下女の腹心当りが二三人。

悪堅い下女君命をはづかしめ。

妾のはだり、下女はゆすりかけ。