猥歌猥謠 ―諸国盆踊唄にあらはれたる─

ござるその夜はいとひはせねど、くるがつもれば浮名立つ。

忍ぶ道には粟黍植ゑな、あはぢもどればきびわるい。

さまは三夜で、宵々ござる、せめていち夜は有明に。

一夜落つるはよも易けれど、身より大事の名が惜しい。

暇ぢやというて差櫛くれた、心解けとの解櫛を。

けさのうの字は嬉しのうの字、きゆる間もなきこの鏡。

臼よ廻はれよ、廻はれよ臼よ、晩の夜挽にまはりあふ。

殿御忌ぶは辛気でならぬ、くぐり九つ、古川七つ、十二小口の板

戸をあけて、忍込んだら夜が明けた。

逢ふたその夜の明六鐘を待つにかへたや暮六に

宵に見初めた白歯の娘、よるもなりそな瓜の蔓。

人の娘と新造の船は、人が見たがるのりたがる。

来いといふたとて行かれる道か、道は四十四里、夜は一夜。

一夜なれなれこの子が出来て、新茶茶壷でこちや知らぬ。

吉田通れば二階から招ぐ、しかも鹿の子の振袖で。

思ふ殿御と臼挽すれば、臼は手車、中でまはる。

十七八はだいとの藁で、うたねど腰がしなやかに。

今の若衆は麦藁襷一夜かけてはかけずてに。

これの石臼は挽かねど廻はる、風の車ならなほよかろ。

早乙女の××××を鳩がにらんだとな、にらんだも道理かや、×

×に××をはさんだと。

心通はす杓子のさきで、言はず語らず眼で知らす。

わしとおまへは小藪の小梅、なるもおつるも人しらぬ。

人はけなりや両手に花を、わしも片手に花ほしや。