めくら女郎盲姫

広東人は、よく何かに仔の字をつけたがるのだ。

幼女の事を柳陰仔、下女が美仔、十歳前後の女子が、門仔。●(おう)門仔。

少し大きくなつて、売られる娘を妹仔。男子の売られるのは豕仔─豚の子とは有り難くない異名さ。

この妹仔─売られる娘には、随分と悲惨なものが少くない。

広東名物の瞽姫といふ娼婦がある。

これは肓目の女郎だが、何れも容色のすぐれた一粒擇り、歌も巧みだし、舞も上手だ。

どうして肓目の癖に、しかもかう迄、美しい年頃の娘許り集めたかと始めて瞽姫を買ふ者は不審を打つであろうが、決して彼等は生れながらにして肓目でない。

やはり妹仔─少さい時から売られた娘の中から、殊に器量のよいのを選び、七八つの時分から、みつちりと歌舞を仕込み、十四五歳になつた時、廓の若い者が無理に両眼を砕いて了ふのだ。そうして義眼を入れて、黒い眼鏡をかけさせる。

かうして俄か肓目にしてから、座敷へ出すので、それが瞽姫といはれる女郎である。

客の老少美醜が分らず、遁げる心配もなし、えり好みして、客を振る心配など、毛頭無いので、楼主のいふなり次第、客のするまゝになつて居るといふ素直さ。

眼開きの妓なんかより、広東では、瞽姫が盛んで、客からも悦れてゐる。(支那猥談集より)

流石に支那は淫蕩な国だけあつて、こんな点にまで至れり、尽せりを極めてゐる。