奥州の手紙

さりとも、御下りの近うなりゆくまゝに、をりふし旅の空ながめ、心よりもあはれと、あわただしう御いり候。まことに御心にまかせね別れにしおはしませば、とゞめあへぬかなしさ、申さぬとてもに候。御げんのをりごとに、憎くからぬ御つたへのしなじなよもあさぢが小野のわすれもやるまじく候。このうへはただつゝがなく御くだりをいのるばかり にて候。かしこ。