さとより女親の訪らひきて泣きみ笑ひみ、物がたりなどす。げに見るかひある女子を、かかる所にはなち置ては、心のやみの霽るゝべきかたもあらじかし。此ころほひより、遊女ども格子のまに出てならぶ。顕証なれば、痛よみする人もなし。たゞ田舎人の無骨しきが、たちめぐらひつゝ、めを大きになしてうかがふ、うちには石なとり、貝あはせなどしてあそぶ。ふたつばかりの児のおかしげなるを、ひざにすゑて愛しみあそばし、掻撫でつゝ可愛たがるあやしきえせ法師を、よかきの外によびいれて夢かたりし、占卦なととふ。ひさしくもなりにけるかなとうちおしぬるは、此ゆふぐれのこゝろもとなきにやあらん。又かたへに打しめりて、心のうらぞまさしかりりるといふは、さ忘られぬる人なる可し。との力にはそば麦いれたる筥ども、になひつゞけて、くばりありく、さるはよるの衾あたらしう調じたるいはひごとゝて、かゝる事はするなりけり、大方衾などは打しのびてとりかくし、物すべきをもて出て、厳しくもてなす、例かはりたるならはしになん。